2023年03月31日
桜日記
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.03.31第一面より引用掲載させていただきました。
桜日記三月盡(じん)と書き納む 正岡子規『寒山落木』

三月盡とは1873(明治6)年から始まる新暦(太陽暦)を意識した表記である。それ以前は弥生盡といった。新暦では一月遅れ、4月末だ。
掲句は94(明治27)年作で句集では「行春ををしむや平家物語」など行春の次に出る。花だよりを記す「桜日記」を書き納めたのであれば弥生盡と書くところを新暦に従い三月盡を用いたのか。子規にはもう一句「不盡のねに三月盡の青さ哉」がある。これも弥生盡の意で用いたのであろう。新暦への改訂による混乱が三月盡にはある。(宮坂静生)
※日本農業新聞2023.03.31第一面より引用掲載させていただきました。
桜日記三月盡(じん)と書き納む 正岡子規『寒山落木』

三月盡とは1873(明治6)年から始まる新暦(太陽暦)を意識した表記である。それ以前は弥生盡といった。新暦では一月遅れ、4月末だ。
掲句は94(明治27)年作で句集では「行春ををしむや平家物語」など行春の次に出る。花だよりを記す「桜日記」を書き納めたのであれば弥生盡と書くところを新暦に従い三月盡を用いたのか。子規にはもう一句「不盡のねに三月盡の青さ哉」がある。これも弥生盡の意で用いたのであろう。新暦への改訂による混乱が三月盡にはある。(宮坂静生)
2023年03月30日
しんきろう
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.03.29第一面より引用掲載させていただきました。
海市からあなたに届く葉書の絵 船矢深雪『風わたる街』

海市(蜃気楼)のように『風わたる街』に惹かれた。句集の帯に俳句による函館スケッチとある。
一度函館の夜景を見たことがある。それだけに、藤村の妻の実家網元の秦家にはどのあたりか。日本最古のギリシャ正教会聖堂のハリストス正教会も見たいし、内藤鳴雪が遺愛と名付けたアメリカ・メゾジスと系ミッションスクールにも興味がある。子規の新俳句を推進した日本派俳人にはメソジスト系のキリスト教の影響があった。作者も遺愛学院の卒業生という。(宮坂静生)
※日本農業新聞2023.03.29第一面より引用掲載させていただきました。
海市からあなたに届く葉書の絵 船矢深雪『風わたる街』

海市(蜃気楼)のように『風わたる街』に惹かれた。句集の帯に俳句による函館スケッチとある。
一度函館の夜景を見たことがある。それだけに、藤村の妻の実家網元の秦家にはどのあたりか。日本最古のギリシャ正教会聖堂のハリストス正教会も見たいし、内藤鳴雪が遺愛と名付けたアメリカ・メゾジスと系ミッションスクールにも興味がある。子規の新俳句を推進した日本派俳人にはメソジスト系のキリスト教の影響があった。作者も遺愛学院の卒業生という。(宮坂静生)
2023年03月28日
春の信濃路「諏訪」
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.03.28第一面より引用掲載させていただきました。
信濃路はいつ春にならん夕づく日入りてしまらく黄なる空のいろ 島木赤彦『柹蔭集』

今日は赤彦忌。アララギを主宰した歌人島木赤彦は、今から97年前の今日、胃がんによって亡くなった。享年49歳。
彼は晩年を諏訪で過ごす。諏訪は春が遅い。3月になってもまだ空気は冷え冷えとしている。夕方が長くなって日が沈んだあともしばらく黄色に空は明るんでいる。その空を見ながら、赤彦は「信濃はいつ春になるのだろう」と思う。春の到来を待ちかねて彼は逝った。(大辻隆弘)
※日本農業新聞2023.03.28第一面より引用掲載させていただきました。
信濃路はいつ春にならん夕づく日入りてしまらく黄なる空のいろ 島木赤彦『柹蔭集』

今日は赤彦忌。アララギを主宰した歌人島木赤彦は、今から97年前の今日、胃がんによって亡くなった。享年49歳。
彼は晩年を諏訪で過ごす。諏訪は春が遅い。3月になってもまだ空気は冷え冷えとしている。夕方が長くなって日が沈んだあともしばらく黄色に空は明るんでいる。その空を見ながら、赤彦は「信濃はいつ春になるのだろう」と思う。春の到来を待ちかねて彼は逝った。(大辻隆弘)
2023年03月27日
利休忌
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.03.27第一面より引用掲載させていただきました。
利休忌の海鳴せまる白襖 鷲谷七菜子『花寂』

旧暦2月28日は利休忌。京都大徳寺では3月27日、28日に利休忌を催す。茶道の心得もない私には、掲句の場景からふと浮かぶのは井上靖の短編「利休の死」の場面である。
庭に竹藪がさざめく利休の堺の居宅の白襖に海鳴りが迫ったものかは知らない。が、利休が秀吉からの使いを待つ日の佇まいには海鳴りと白襖がぜひ必要な気がする。
初見に「大欲物」と秀吉を見抜いて以来利休は秀吉が大嫌い。秀吉もまた唯の茶の友以上になる利休を許せなかった。(宮坂静生)
※日本農業新聞2023.03.27第一面より引用掲載させていただきました。
利休忌の海鳴せまる白襖 鷲谷七菜子『花寂』

旧暦2月28日は利休忌。京都大徳寺では3月27日、28日に利休忌を催す。茶道の心得もない私には、掲句の場景からふと浮かぶのは井上靖の短編「利休の死」の場面である。
庭に竹藪がさざめく利休の堺の居宅の白襖に海鳴りが迫ったものかは知らない。が、利休が秀吉からの使いを待つ日の佇まいには海鳴りと白襖がぜひ必要な気がする。
初見に「大欲物」と秀吉を見抜いて以来利休は秀吉が大嫌い。秀吉もまた唯の茶の友以上になる利休を許せなかった。(宮坂静生)
2023年03月26日
2023年03月26日
2023年03月26日
2023年03月25日
生卵を割る瞬間
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.03.25第一面より引用掲載させていただきました。
生卵落ちる感触は黄の重さつつみ放てる冷たさににて
高橋みずほ『野にある』

まだうすら寒い朝、冷蔵庫から冷たい卵を取り出して、机の角にコツッと当てる。ボウルに生卵を落とす。白い殻の割れ目から、帰路の黄味が顔を出し、半透明の白身に包まれながら落下してゆく。その雰囲気を捉えた歌だ。
ありふれた場景だが、表現方法が独特。黄味の「重さ」を白身の「冷たさ」が包み解き放つ。重さや冷たさという抽象的な表現で黄味と白身を表現していて面白い。(大辻隆弘)
※日本農業新聞2023.03.25第一面より引用掲載させていただきました。
生卵落ちる感触は黄の重さつつみ放てる冷たさににて
高橋みずほ『野にある』

まだうすら寒い朝、冷蔵庫から冷たい卵を取り出して、机の角にコツッと当てる。ボウルに生卵を落とす。白い殻の割れ目から、帰路の黄味が顔を出し、半透明の白身に包まれながら落下してゆく。その雰囲気を捉えた歌だ。
ありふれた場景だが、表現方法が独特。黄味の「重さ」を白身の「冷たさ」が包み解き放つ。重さや冷たさという抽象的な表現で黄味と白身を表現していて面白い。(大辻隆弘)
2023年03月24日
ボンゴ
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.03.24第一面より引用掲載させていただきました。
春は中年ボンゴのように誇失せ 幡谷東吾『即離集』

12歳、旧制中学在学中から作句、早熟な少年であった。戦前は中国に渡り青島(チンタオ)の新聞社に入社。大陸の俳誌にも関わるが、戦後、西東三鬼など新興俳句系の俳人を中心に交遊を広げる。幡谷葬儀社と渾名(あだな)されるほど俳句年鑑などの追悼記事を書く。
三鬼の「中年や遠くみのれる夜の桃」が念頭にあったと思われる。
ボンゴは打楽器。大小を繋げた太鼓を叩く中南米音楽のドラム。どこか投げやりな頽廃的(たいはいてき)な哀調が惹きつける。わが俳句人生も似ているという自嘲の句。(宮坂静生)
※日本農業新聞2023.03.24第一面より引用掲載させていただきました。
春は中年ボンゴのように誇失せ 幡谷東吾『即離集』

12歳、旧制中学在学中から作句、早熟な少年であった。戦前は中国に渡り青島(チンタオ)の新聞社に入社。大陸の俳誌にも関わるが、戦後、西東三鬼など新興俳句系の俳人を中心に交遊を広げる。幡谷葬儀社と渾名(あだな)されるほど俳句年鑑などの追悼記事を書く。
三鬼の「中年や遠くみのれる夜の桃」が念頭にあったと思われる。
ボンゴは打楽器。大小を繋げた太鼓を叩く中南米音楽のドラム。どこか投げやりな頽廃的(たいはいてき)な哀調が惹きつける。わが俳句人生も似ているという自嘲の句。(宮坂静生)
2023年03月23日
風葬
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.03.23第一面より引用掲載させていただきました。
一生は長き風葬 夕光(ゆふかげ)を曳きてあかるき樹下帰りきぬ 菅原百合絵『たましひの薄衣』

夕方の光があかるくまぶしくなった。街路樹を抜けて帰路に就く。冬木はまだ芽吹きの前。枝の間から零れる光に体は照らされる。
そのとき、作者はふと「私の一生は風葬かもしれない」と思ったのだろう。こんな風に陽の光にさらされながら私の肢体はゆっくりと干乾(ひから)びてゆく・・・・・・。自分の目の前に広がる未来をそんな風に想像してみる。
若い人らしい感慨なのかもしれない。(大辻隆弘)
※日本農業新聞2023.03.23第一面より引用掲載させていただきました。
一生は長き風葬 夕光(ゆふかげ)を曳きてあかるき樹下帰りきぬ 菅原百合絵『たましひの薄衣』

夕方の光があかるくまぶしくなった。街路樹を抜けて帰路に就く。冬木はまだ芽吹きの前。枝の間から零れる光に体は照らされる。
そのとき、作者はふと「私の一生は風葬かもしれない」と思ったのだろう。こんな風に陽の光にさらされながら私の肢体はゆっくりと干乾(ひから)びてゆく・・・・・・。自分の目の前に広がる未来をそんな風に想像してみる。
若い人らしい感慨なのかもしれない。(大辻隆弘)