2023年11月30日

秋の湖畔

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.30第一面より引用掲載させていただきました。
湖にしげる水草立つ風のゆくへを追ひてつぎつぎかしぐ                     林三重子『桜桃』

 湖の水際に葦が生えている。その葦も、秋の終わりには枯れ尽くしてしまう。蕭条(しょうじょう)とした風景が目の前に広がる。
 そこに一陣の風が吹く。湖畔を通り過ぎるその風に遅れて葦がなびく。そのなびきが向こうへ、向こうへと伝わっていく。
 葦がサラサラと触れ合う音は、今年の秋をどこかへ連れ去ってゆく。11月も今日で終わり。秋は、今夜、遠く旅立つ。
                (大辻隆弘)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:34Comments(0)出来事

2023年11月29日

夜の鐘の声

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.28第一面より引用掲載させていただきました。
あれ聞けと時雨来る夜の
  鐘の声
    其角『猿蓑』

 鐘の音を声と聞く人情が一句を包む。遠い寺の鐘の音に初冬の夜の時雨がばらつく侘しさがいっそう強調される。おお寒い。
 鐘は三井寺か浅草寺か。はたまた中国の張継の漢詩「楓橋夜泊」(ふうきょうやはく)を踏まえた寒山寺か。
 どこか芝居がかかっているのは伊達な作者其角の好みである。吉原遊興の一夜の寝物語とも連想が及ぶ。侘しさの演出だ。
 「あれ聞け」は鐘の音が人声のように促すのであろう。音色はいんいんと連想を広げる。(宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 10:07Comments(0)出来事

2023年11月28日

空也上人

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.27第一面より引用掲載させていただきました。
木枯らしや空也の口の中を吹く     長谷川櫂『蓬莱』

 京都の木枯らしを六波羅密寺の空也上人の口中にみた着想に俳味の真髄wp感じさせられる。
 空也が浄土宗の念仏「南無阿弥陀仏」と唱えると6体の阿弥陀如来の姿が出現したという。
 比叡颪(おろし)の木枯らしが吹き荒れる町中。平安時代も令和の現今も変わらない。いつの時代でも、市聖(いちのひじり)の口中は飢餓の濁世である。夏は、疫病がはやり、路頭に病者や死者が折り重なる。祭ごとは領土や地権争いの明け暮れ。戦に戦が覆う凄惨な争い。
 空也いずこ。    (宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 09:17Comments(0)出来事

2023年11月28日

防災研修会

『島学区防災研修会』
全学区全町安否確認訓防災研修会を開催!
11月26日島学区防災研修会を実施しました。赤十字奉仕団高島地区委員会桑原勲委員長を、講師に迎えて[防災▪減災を考える]と題してロケットストーブの製作をしました。短時間(約1時間)で8台ものストーブが完成しました。また、同時に日本赤十字奉仕団島分団の女性部の皆さんが、災害時に役立つ蒸しパンを調理して下さいました。子ども達も参加して、災害の時に何が大切かを学ぶ事が出来ました。





  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 09:04Comments(0)学区まちづくり協議会事業

2023年11月25日

朝霧と山鳩の声

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.25第一面より引用掲載させていただきました。
朝霧の底に目覚めて聴きをればいよいよ潤む
  山鳩のこゑ
     
         祐德美惠子『左肩がしづかに』


 山鳩の声は不思議だ。ドド-ポポー、ドド-ポポ-と同じ調子で鳴いていたかと思うと、中途半端なところでふと鳴きやんでしまう。くぐもった声でどこで鳴いているのか分からない。ぼんやりとした声に包まれると眠たくなってしまう。
 晩秋の朝、真っ白い霧が辺りにわだかまっている。その霧のどこか、深いところから、あの山鳩の声が聞こえてくる。しっとり潤うようなあの声が。(大辻隆弘)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:26Comments(0)出来事

2023年11月24日

冬木の芽

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.24第一面より引用掲載させていただきました。
未来から借りてる地球
      冬木の芽 
   
     石川まゆみ『光あるうち』

 積極的な人だ。こんな句もある。「サラダスティク人参の反発力」
 食卓上の人参のわずかな反りにも前向きな生きる力を感じている。
 広島県生まれ、広島市在住。本業は銀行員、金子兜太門。70代は青春の気合がある。
 句集には、「ひろしま美術館」を昭和53年に建てた企業家井藤勲雄の瓦礫(がれき)を感動に変えた経緯を紹介している。広島の街そのものの「復興」が世界の、いや地球の未来を目指している「冬木の芽」だと深部に触れているのがすばらしい。(宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:10Comments(0)出来事

2023年11月22日

十日夜

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.22第一面より引用掲載させていただきました。
十日夜(とおかんや)の藁(わら)鉄砲といふ兵器    
      桑原三郎『だんだん』


 今日は十日夜。東日本での収穫祭の呼称として親しい。長野県などでは案山子揚(かかしあげ)とも呼ぶ。斗枡(とます)に米や大根、人参などの収穫物を入れ、お月さまを祀り、感謝する行事だ。
 西日本では亥の子と称し、亥の子突きを行う。私が見た宇和島では、径30㌢ほどの丸石を練り何本かの綱でドスンドスンと土突きをする。
 十日夜でも藁鉄砲で土竜(もぐら)打ちと称し、地面をたたく所作をする。稲藁であっても鉄砲と名が付くものは物騒な兵器の名。戦を連想するものは好きではないという。(宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:43Comments(0)出来事

2023年11月21日

広瀬すずとポップコーン

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.21第一面より引用掲載させていただきました。
広瀬すずの素顔のようなキャラメルのポップコーンは
 黄昏の色
   ファブリ『リモーネ、リモーネ』

 人気若手俳優の広瀬すず。その素顔はポップコーンのようだと作者は言う。残念ながら私は広瀬すずの素顔を見たことはないので、この比喩が適切かどうか分からない。
 でも作者は確信する。彼女の素顔はきっとポップコーンそっくりだ、トウモロコシの殻が弾けて膨らむように彼女の笑顔は晴れやかに弾けるに違いない、と。
 作者の故郷はイタリア。明るい感性が心地よい歌だ。(大辻隆弘)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:09Comments(0)出来事

2023年11月20日

風呂吹き大根

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.20第一面より引用掲載させていただきました。
留守番や風呂吹を煮る
    音の中
     千鳥由貴『巣立鳥』

 留守番は大人になっても不安でさみしい。風呂吹大根を煮ながら、その煮え立つ音がごとごとと聞こえるのが安心感をもたらす。
 作者の若い主婦感覚に注目した。1人の留守番は一人暮らしに慣れた感覚ではない。不意に1人にされ、瀬戸際に立たされた感じである。
 作者の句に「夜回りの近づき私語の聞こえくる」がある。家の中で聞き耳を立て、今晩の当番はだれか推測したりする。しかし、夜更けて、遠くから聞こえる足音は怖(おそ)ろしい。 
 留守番は孤独である。(宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 10:56Comments(0)出来事

2023年11月18日

食器洗い

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.11.18第一面より引用掲載させていただきました。
零時 ひとり椀(わん)をあらえば椀のなか泡はわたしを見ながら動く    
      北山あさひ『ヒューマン・ライツ』


 作者は札幌の放送局に勤める歌人。不規則な勤務が続く仕事だ。残業があると帰宅が午前0時近くになることもあるのだろう。
 深夜、自分の食器を洗う。水はもう冷たい。お椀の洗剤をすすぐと内側の表面を泡がじっと自分を見つめているような感じがする。
 泡を見つめる。泡に見つめられる。そんな風にして長い一日が静かに終わってゆく。(大辻隆弘)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:59Comments(0)出来事