2022年02月14日

司馬遼太郎

「カエルも総理大臣も同じですよ!」
※日本農業新聞2022.02.12第一面「四季」より引用させていただきました。

敗戦の年の暮れ。復員外套(がいとう)に身を包んだ22歳の若者が、郷里の大阪を当てもなく歩いていた▼焼け野原に残った電柱の張り紙に足が止まる。「記者募集」の文字に飛び付いた。新聞記者・司馬遼太郎が生まれた瞬間である。二つの小さな新聞社を経て、1948年には産経新聞社に入社。在職中に直木賞を受賞し、国民的作家への道を歩みだす。都合16年の記者生活が司馬文学の根っこにある▼「生まれ変わっても新聞記者になりたい」が口癖だったという。後輩記者らがその原像を追った『新聞記者 司馬遼太郎』(文春文庫)は、知られざる作家の姿を描く。「無償の功名主義」を理想の記者像とした。出世や栄達と無縁で、仕事に異常な情熱を傾け、特ダネを取っても無名で何の報いもないのが記者だと▼司馬にそれを教えたのが地方通信部の老記者だった。例えばこの時季なら、冬ごもりのカエルが顔を出すのを写真に収め、春の訪れを告げる。どの社よりも早く報道するのが彼の自慢で、こう言うのだった。「カエルも総理大臣も同じですよ。大臣に会うばかりでは新聞は出来ない」▼今日は(2月12日)寒中の「菜の花忌」。歴史を俯瞰する目と市井に向ける温かなまなざし。多くの作品に新聞記者司馬が息づいている。  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 10:51Comments(0)出来事