2023年08月29日

吾亦紅

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.08.29第一面より引用掲載させていただきました。
ゆつくりとかなしむために吾亦紅(われもこう)      
櫂未知子『カムイ』


 直接の動機は母の死をめぐるかなしみを詠んだものであろう。
 「三姉妹の真ん中ゆゑ母と寝し記憶なし。されど仮通夜だけは『扇風機弱めに母を独り占め』」というしみじみした句がある。
 吾亦紅は坊主頭のように萼(がく)がぎっしり集まり、花弁がない。紫がかった焦げ茶色。極めて地味な花だ。
 掲句の季語の斡旋に俳味がある。表記が自分を見つめている風情。
 かなしみは深まる情感である。喜びのように周りに広がる感情ではない。紅を凝視する。(宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 13:18Comments(0)出来事