2025年01月22日

オリオン座

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025,01.22第一面より引用掲載させていただきました。
オリオンの三つ星低く垂れ下がりわが蟠(わだかま)り街上にあり   柴田典昭『半日の閑』

 オリオン座が高く輝く季節になった。狩人であるオリオンが凜々しく天上に屹立(きつりつ)している。
 オリオンの腰の部分、ちょうどベルトのあたりに、三つの星が横に並んでいる。向かって左側の星は、かすかに垂れ下がっているように見える。オリオンはあんなに気高く輝いているのに、私はつまらぬ「蟠り」を抱いて、この地上をさまよっている。そんな自虐の気分に襲われる作者。(大辻隆弘)
  


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2025年01月20日

医療派遣団DMAT

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.20第一面より引用掲載させていただきました。
はや三十年思い出しおり神戸の寒さ医療派遣の眠れぬ夜の  松森邦昭『明石の門』

 今日から大寒。一年中で最も寒い時期である。
 ちょうど三十年前の今日、医師である作者は神戸にいた。震災後、医療派遣団の一員として被災者の治療にあたっていたのである。不眠不休で医療活動をした、あの頃の寒さを作者は今も忘れはしない。
 作者の松森は兵庫県明石市出身。実家は震災により壊滅した。故郷喪失の悲しみを胸に秘めて治療に当たったあの夜。(大辻隆弘)
  


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2025年01月18日

雪の日

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.18第一面より引用掲載させていただきました。
雪の日の戦後に生れて以後も戦後   攝津幸彦『鹿々集』

 作者が生まれたのは昭和22年1月28日。俳人である母親によると大雪だったという。平成8年、49歳で早逝した。30年近く経つが言葉に拘(こだわ)る俳人に作者は人気がある。
 掲句を愛誦(あいしょう)していると、「以後」は「死後」ではないかと独断が働く。
 徹底しておれは戦後の人間だとの拘りを感じる。その拘りがわが死後も続くと想像するのは斬新である。
 本名幸彦は仁平勝によると「二度と戦のない平和な人生を幸せに」という祈りを込めて付けられた由。
 戦争拒否、これが戦後。(宮坂静生)
  


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2025年01月17日

無常の実相

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.17第一面より引用掲載させていただきました。
大地震に崩れた家の天井に十二の吾がまだ住んでゐる   楠誓英『青昏抄』

 今から三十年前の今日、午前五時四十六分、阪神・淡路大震災が起こった。寒い暁だった。
 作者は当時十二歳。神戸に住んでいた。生家の寺院は地震で倒壊。彼の兄はその犠牲となった。作者は、その出来事をひりひりとした痛みとともに記憶しているのだろう。
 あれから、長い年月が経ったけれど、自分は十二歳のあの時のままだ。幼くして無常の実相を知ってしまったあの朝。(大辻隆弘)
  


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2025年01月15日

雪原の一本の木

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.15第一面より引用掲載させていただきました。
雪国の一本の樹の恋しかり瞑(つむ)れば寂寂(じゃくじゃく)と雪の降りくる  
          磯俣田鶴子『生生世世』


 雪国の雪原に、一本すっくりと立つ樹木。それを心のなかにイメージしてみる。蕭条(しょうじょう)と雪が降りしきるなか、その木の立ち姿は凛(りん)として厳しい。その姿に作者は、励まされた気分になったのだろう。
 作者は前登志夫に師事した。この歌は、師の「かなしみは明るさゆゑにきたりけり一本の樹の翳(かげ)らひにけり」を想起させる。木の立ちざまが、人の心を深く励ますことがあるのだ。(大辻隆弘)
  


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2025年01月14日

繭玉

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.14第一面より引用掲載させていただきました。
幼年のはじめの色を繭玉に    神田ひろみ『われを去らず』

 小正月に飾る繭玉作りは楽しい思い出がある。大きめの兜鉢で米の粉を練り、色をつける。あの色粉のどきっとする鮮やかな紅。
 掲句の「幼少のはじめの色」とは純白ではないか。米の粉の色そのもの。白は無限の夢見る色。長い間わが家の繭玉は白であった。
 紅は覚醒の色。紅を施す繭玉を知ったのは縁日で見てからである。そこから、世の中を意識する。私の混濁が始まるのも、繭玉に色を施してからのような気がする。些細(ささい)なことから人生に目覚める。(宮坂静生)
  


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2025年01月10日

冬の富士山

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.10第一面より引用掲載させていただきました。
富士山が特別きれいに見えている寂しいときの真冬のエール   加藤健司『方程式じゃ愛は解けない』

 三学期が始まった。教員にとっては、また忙しい毎日の連続だ。
 三学期の初めは寒い。夜が明けるのも遅いので、まだ暗いうちから、家を出なければならない。気持ちが、おのずから萎えてしまう。
 が、早朝の空気は澄んでいる。作者が住む埼玉からは、朝日に照らされた富士の山容が見える。雪をかむったその姿が、今朝はとりわけ美しい。それをエールに換えて、学校に向かう作者。(大辻隆弘)
  


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2025年01月09日

寒林

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.09第一面より引用掲載させていただきました。
寒林に我を残して来(きた)りけり   福神規子『火のにほひ』

 清冽なだけの句ではない。寒中の厳しい林への執心が深い。同時期の落葉の句に目を留める。
〈あの頃が懐かし落葉踏みながら〉〈落葉踏むいまのよはひを今生きて〉。前句には夫急逝とある。
 厳粛な思いに打たれる。寒林には亡き夫がいる。寒林は夫を偲ぶ格好な場所である。「死があまりに身近でそこだけ知らず知らずに封印しまっているのか」と句集あとがきにある。寒林は作者だけの夫との語らいの場。封印された、そこに夫は生きているのである。(宮坂静生)
  


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2025年01月08日

竹生島

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.08第一面より引用掲載させていただきました。
竹生島を墨絵となして雪しまく琵琶湖の水の波立ち荒らし    平賀冨美子『土偶の禱り』

 滋賀県の北部を湖北という。日本海側の気候の影響を受けて、冬は天候が荒れる。淡水湖である琵琶湖にも、北風によって荒波が立つことがある。
 雪が降り乱れる琵琶湖の沖に、うっすら黒い影となった竹生島が見える。その湖の様子は、まるで水墨画を見るようだ。「しまく」という動詞は、雨や雪が乱れ降るときに使う言葉。この古語も、この歌ではよく効いている。(大辻隆弘)
  


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2025年01月07日

雪の中の白菜

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.01.07第一面より引用掲載させていただきました。
白菜は雪降る前に逮捕せよ生えたるままに藁で括りて   冨貴髙司『茜』

白菜の玉は、ほおっておくとすぐに、だらしなく開いてしまう。一番外側の葉がビローンとめくれて、地面についてしまうのだ。
 だから農家の人は、葉が広がらないように、藁で白菜の玉を結ぶ。雪が来る前に、処理する必要がある。
 藁で結ばれた白菜の玉は、まるでお上のお縄を頂戴した下手人のようだ。まるで逮捕された犯人であるかのように、ぐるぐる巻きにされた白菜たち。(大辻隆弘)
  


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