夜逃げ
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.04.23第一面より引用掲載させていただきました。
夜逃げにはリアカー使ふ弥生かな
永島のりお「ひとり旅」
お芝居の舞台を想像した。弥生は旧暦の3月。今の4月に当たる。花も咲きいい陽気になり出す頃である。
江戸時代に町人暮らしは身軽。部屋の隅にある柳行李(やなぎごうり)にはいざという時には、ひょいと担ぎ逃げ出せるように、大事なものを入れていた。
掲句はリアカーに家財道具を詰め込みというからぎりぎり戦後の光景か。借金が嵩み、首が廻らないくらいではすまず、深更に家を捨てる事態に相成った。音が出ないリアカーが眼目。我が家も夜逃げは免れたが、戦後暮らしはご同様。(宮坂静生)
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