肝油ドロップ

ゴンザレスこと大西實

2024年12月03日 14:14

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.12.03第一面より引用掲載させていただきました。
飢えし日の鯨の肝油忘れまじ   中村和弘『荊棘(おどろ)』

 戦後は遠くなった。とはいえ、食べ物の記憶はときどき不意に蘇る。肝油ドロップが国民学校で配られたことがある。敗戦時2年生だったので、3年か4年の頃か。あれが鯨の肝臓に含まれる脂肪分とは知らなかったが、栄養補給のためであった。
 舐めているとどろっとした生ぬるい液体がでてくる。美味いものではないが、ビタミンAやBが不足しがちな子どもには体力を付けるために大事だと保健の先生が校内を説いて回った。肥満児はいない。みんなガリガリ痩せていた。(宮坂静生)


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