藪椿(やぶつばき)

ゴンザレスこと大西實

2024年04月04日 07:28

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.04.03第一面より引用掲載させていただきました。
藪椿(やぶつばき)あさき水辺におちたるが重なりあひて朽ちゆくところ   弘井文子『紙ひかうき』

 椿の花は意外に長く咲く。冬の後半から早春にかけて。が、さすがにその花も終わり。花の形を保ったままポトッと地面に落ちる。
 椿の花には油が多く含まれている。地面に落ちた花はしだいに黒ずみ、最後にはタールのようになって地面にべったりと張りついてしまう。あの姿を見るのはちょっと切ない。落ち椿を見る作者の目にはそんな花の終末の姿が浮かんできたのだろう。細やかな観察の歌だ。(大辻隆弘)


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