夏霧

ゴンザレスこと大西實

2024年07月12日 07:56

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.07.12第一面より引用掲載させていただきました。
夏霧がうすめて山の遠近感  松永典子 『耳ふたつ』


大気が気になる皮膚感覚が敏感な人であろうか。〈電柱の痒(かゆ)さうに立つ油蝉(あぶらぜみ)〉とも詠む。油蝉が留まって鳴き立て電柱もむず痒い気になっている。
 山に夏霧がかかる。大気の動きで、霧が薄くなると、山は近づく。濃くなると遠のく。濃紺の夏山の遠近感は見つめる者の気分を左右する。
 山へ登る者はもくもくと歩く。ときどき顔をあげ自分の位置を感覚的に確かめながら。
 夏霧は動きが激しいだけにさっぱりした精気がある。(宮坂静生)



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