雪を押しやるワイパー

ゴンザレスこと大西實

2023年12月25日 10:15

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2023.12.25第一面より引用掲載させていただきました。
鬱(うつ)っぽい音をきしませてワイパーは霙(みぞれ)まじりの雪を押しやる   
          清水春美『風のままに』


 朝、エンジンをかけて出勤しようとする。フロントグラスには水気の多い雪がつもっている。
 ワイパーのレバーを倒す。ワイパーは雪の重みに苦しんで、きしんだ音を立てて動き始める。雨粒だったら弾き元気に飛ばせるのに、雪になるとその動きには鈍く苦しげだ。ギギ、ギギギ、ギギギギ。ワイパーの腕はきしみながら、ゆっくりと昨夜の雪を左右に押しやってゆく。作者は奥美濃郡上に住む歌人。(大辻隆弘)


関連記事