戦国乱世にタイムスリップ

ゴンザレスこと大西實

2022年09月01日 08:33

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2022.09.01第一面より引用掲載させていただきました。
夕野分猪(しし)らぶつかり合つて駆く    鈴木正治『雪間』

 今日は二百十日。原発破損事故により捨てられた被爆牛を詠み知られた作者。楸邨門下にして97歳。地域文化振興賞を受賞している。
 掲句も11年後の被災地詠。嵐到来の夕方、野生の猪がからだをぶつけ合い駆けている。台風でなく、古風な「野分」の語が働く。荒涼たる原野を彷彿とさせる。
 現代が俄に、戦国時代にタオムスリップする。ビルが乱立した大都会が一瞬にして嚝野に化す幻想が現実味を帯びる。猪だけが元気、人間がいない。不気味だ。(宮坂静生)


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