燗の酒のあて
おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2025.02.05第一面より引用掲載させていただきました。
塩辛をなめぬる燗の酒をなめ贅とはかかる単純にあり 矢部雅之『Another Good Day!』
春は名のみ。夜はまだしんしんとして冷える。こういうとき、お酒の飲める人は、燗の酒が恋しくなるのだろう。
卓上には烏賊(いか)の塩辛。ぐい飲みにそそがれた温めの酒。それで晩酌をする。体のなかに、潮の香りと温かさがゆっくりと広がってゆく。そんなとき作者は「こんな贅沢(ぜいたく)が他のどこにあるのだ」という気分になる。下戸の私には羨ましいかぎりの陶然境(とうぜんさかい)。(大辻隆弘)