散る桜

ゴンザレスこと大西實

2024年03月19日 07:56


おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.03.19第一面より引用掲載させていただきました。
散りぬるを桜語りの流難譚(りゅうりたん)   仁平勝『花盗人』

 花時を迎える。花の盛りよりも、散る哀愁に日本人は記憶した。いろは歌に歌われた情著を貴種流離譚に仕立てたのは折口信夫である。
 伊勢物語の在原業平(ありわらのなりひら)は都を捨てて東国(あずまのくに)へ生きる天地を求めて流されてゆく。奥州平泉へ救いを求めた義経も同じ。須磨への光源氏も壇ノ浦の平家一門もこれらは西国への敗者。
 先年、隠岐の島の後鳥羽院の後を訪ね、院を支えた島人の純情に触れた。牛突きまで催し、慰めている。
 散る桜の哀しみを聡明な貴種はいかに噛みしめたことか。(宮坂静生)

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