2024年02月23日

野焼き

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.23第一面より引用掲載させていただきました。
国原や野火の走り火
 よもすがら
  水原秋櫻子『葛飾』

 前書「筑波山縁起」とある。
 昭和3年秋櫻子の初めての連作5句のうちの1句。筑波山縁起への関心から上代の常陸風土記に記された国原を想像したもの。
 春早く野焼きをする。害虫駆除や草木灰の肥えを手にするばかりではない。筑波双峰に捧げる御神火(ごじんか)でもあろう。炎炎と夜もすがら燃え続ける上代の野火の逞(たくま)しさ。
 句は朗誦(ろうしょう)して深遠さに打たれる。音韻の上5音「国原や」(uiaaa)と下5音「よもすがら」(oouaa)との繰り返しが美しい。(宮坂静生)
  


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2024年02月22日

温かい陽射しをあびて

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.22第一面より引用掲載させていただきました。
街の断面にやがてまぶしい油菜の花が咲き電熱のやうに気温がたかまる   中野嘉一『秩序』

 長いな」、」これでも短歌かな。そう思う人もあるだろう。が、短歌なのだ。この歌のように五七五七七にこだわらない短歌を自由律短歌という。
 作者の中野嘉一は昭和初期の詩人。自由律短歌を作る歌人でもあった。この歌は昭和25年早春、三重県中部の山あいの町を訪れた時の歌。温かい陽ざしをあびてアブラナの花が今咲こうとしている。そんな情景を「断面」「電熱」といった硬質な詩語によって表現している。(大辻隆弘)
  


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2024年02月21日

猫柳

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.21第一面より引用掲載させて頂きました。
夜は夜の光りを継ぎて猫柳    湯橋喜美『春の波紋』

 2月は自然界の胎動の季節。いち早く岸辺の猫柳の蕾(つぼみ)が膨らむ。
 小正月に餅花や繭玉を挿すために手にした時はまだ固かった蕾が、一月後には苞(ほう)から長楕円形で灰白色の花穂をのぞかせる。
 「太陽が仕事している猫やなぎ」(池田澄子)という早春のお日さまを讃えた句もあるが、日が濃くなり出す昼ばかりではない。
 余寒きびしい夜も月の光を貯(たくわ)えて、猫毛のような雄花雌花が盛んに花序を整えるとは感動する。月光に包まれた猫柳を見たい。(宮坂静生)

  


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2024年02月20日

まち協ニュース3月号

まち協ニュース2024年3月号が出来ました!
今月のラインナップ
#:地域再生大賞優秀賞受賞!
&:買い物・通院に便利です
◇:伊勢太神楽による獅子舞
△:ボランティア募集!
〇:わたSHIGA輝く国スポ・障スポ
■:哲学の道ウオーク
$子育てサロン
Θふるさと今昔物語
▽むべなるかな山登り
以上です





  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 11:05Comments(0)学区まちづくり協議会事業

2024年02月20日

春の雪

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.20第一面より引用掲載させていただきました。
春の雪曲がれるバスを見つむれば窓の中にも人はうろつく  目黒哲朗『生きる力』

 季節はいつの間にか雨水。雪が雨に変わる。そんな時期だ。
 春のぼた雪が降る。雪が視界を閉ざす。眼の前をバスが通る。バスの内部は電灯に照らされてほの明るい。
 バスは交差点を曲がる。車窓の中にうつむいている人の顔が見える。が、それも一瞬、バスは降りしきる雪の中を遠ざかってゆく。
 日常のさりげない一コマを五七五七七で切り取る。そうすることで歌が生まれる。(大辻隆弘)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 10:36Comments(0)出来事

2024年02月19日

瓦礫の中から

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.19第一面より引用掲載させていただきました。
風よりもひかり瓦礫(がれき)も鍋も血も   堀田季何『人類の午後』

 風光る時を迎えた。掲句は風よりもひかり、風光るではばいという。
 春は光が戦場や地震の瓦礫に刺さる。そこに転がる鍋を光らせる。なによりも、流された血にあたる。
 瓦礫・鍋・血と残酷なものへ、悲惨なものへ焦点が絞られてゆく。のどかな季語「風光る」ということばが分解され、一筋のひかりとなって民族の血まで気付かされる。
 季語を踏まえながら、一行詩であろう。現代の破壊された風景がさりげなく、暴き出される。根源は「血」の争いの指摘が鋭い。(宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 12:08Comments(0)出来事

2024年02月17日

意識して盗め

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.17第一面より引用掲載させていただきました。
雪ふれば思ふ告別の日の雪を「意識して盗め」と笑ひし
  小高さん
    古志香『Banksia』

 この「おはよう名歌と名句」を長く担当した歌人・小高賢。彼が亡くなったのは2014年2月。ちょうど十年前である。告別式の日は東京に春の大雪が降った。
 作者の古志は、長く小高賢に兄事した歌人。二月の雪を見るといつも小高の告別式の朝を思い出してしまうのであろう。「古志さん、優れた表現を意識して盗み取って自分のものにするんだよ」。そんな小高の言葉が作者の胸によみがえる。(大辻隆弘)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:09Comments(0)出来事

2024年02月16日

西行忌

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.16第一面より引用掲載させていただきました。
月負うて雲も旅する西行忌    林翔『あるがまま』

 月の歌人西行ほど慕われる文人はわが国の芸文詩史上に稀(まれ)である。芭蕉が終生憧れた詩人でもあった。
 「願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月の頃」(『続古今集』)
 その願い通り、旧2月16日、河内の弘川寺で逝去。73歳。新暦では3月30日にあたるが、旧暦2月15日を西行忌としている。
 掲句は月を背負い浮遊する雲に託した擬人化表現が巧い。雲は西行の旅姿。満月に「円満清浄」な仏の教えを求めて。(宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:56Comments(0)出来事

2024年02月15日

室見川のシロウオ

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.15第一面より引用掲載させていただきました。
しろうをの遡上(そじょう)を告げて寒気のなか簗(やな)を張りゐる室見川辺に   
     天児都『花だより』


 室見川は「むろみがわ」とよむ。福岡市を流れる二級河川である。
 立春を過ぎるとシロウオが遡上してくる。シロウオはハゼ科の透明な小魚。産卵をするために川をのぼってくるのだ。
 簗をつかったシロウオ漁がはじまると福岡の春も近い。空気も水もまだまだ身を切るように冷たいが、それでも、簗を沈めた川のほとりには春の足音が聞こえつつある。そんな2月なかば。(大辻隆弘)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 08:32Comments(0)出来事

2024年02月14日

白い雲とバレンタインチョコレート

おはよう!今日の名歌と名句
※日本農業新聞2024.02.14第一面より引用掲載させていただきました。
雲は白妙バレンタインのチョコレート   深見けん二『夕茜』

 空には真っ白い雲、手にはバレンタインのチョコレート。
 「雲」と「チョコ」との直接関係がない言葉を合わせるのが取り合わせの句である。
 虚子門の長老として、ものにふれての「写生」を生涯続けられた。取り合わせの句は少ない。取り合わせの句も「季題発想」の句だといわれる。
 すると、掲句はその日、チョコレートを手にした時にふと心が飛躍して、「雲は白妙」と言葉が浮かんだ。純白なチョコレートだ。喜びが表現になったのである。(宮坂静生)
  


Posted by ゴンザレスこと大西實 at 07:56Comments(0)